「いのちをつなぐ学校」スタッフ
による活動報告です。
こんにちは!「いのちをつなぐ学校 by SARAYA」スタッフの牧野です。
心地よい風が吹く5月、私たちは「食のプロ」を目指す学生さんたちが集まる、辻調理師専門学校さんへ出張授業に行ってきました!
今回授業に参加してくれたのは、高度調理技術マネジメント学科3年生の学生の皆さんです。 実は皆さん、すでにお店での実地研修(インターンシップ)を終えて学校に戻ってきたばかり。普段から食材や油に触れ、すでにプロの現場を肌で知っている頼もしいメンバーです。
今回は、彼らと一緒にパーム油が抱える課題について、深く考えていきました。

私たちの暮らしを支える「見えない油」パーム油
突然ですが、皆さんは毎日どんな油を口にしていますか? 「サラダ油やオリーブオイルかな?」と思うかもしれませんが、実は私たちが日本で一番多く消費しているのは「パーム油」という植物油です。
アブラヤシの実から採れるこの油は、サクサク感を出しやすく、酸化しにくく、そして何より「安い」という特徴があります。ポテトチップスやカップ麺、パン、そして洗剤やシャンプーなど、スーパーにある商品の約半分に使われていると言われています。 しかし、原材料名には「植物油脂」と書かれることが多いため、日本では「見えない油」とも呼ばれているんです。
授業では、アブラヤシの実の模型と、現地マレーシアで買ってきた本物のパーム油のボトルを回覧しました。 普段、調理でたくさんの食材や油を扱っている学生さんたちですが、アブラヤシの実やパーム油を見るのはおそらく初めての方が多く、興味深く見ていただいていました。

厨房の現場で、それぞれが感じていた大切な「気づき」
授業の中では、こんな質問を投げかけました。
「インターン先の厨房で『もっと食品ロスを減らせないかな』とか、『もっと環境にいい食材を使えないかな』と、少しでも感じた瞬間があった人はいますか?」
問いかけると、多くの方々が手を挙げてくれました。
多忙な調理現場を経験したからこそ、調理の裏側で出る廃棄の量や、使われている食材の背景に対して、日頃から自然とアンテナを張っていたのですね。すでに一人のプロとしての温かい目線を持っている皆さんにとても感動しました。
ボルネオ島の豊かな自然と、突きつけられる「厳しい現実」
続いて、パーム油の一大産地である「ボルネオ島」のお話をしました。 オランウータンや、ここでしか生きられないボルネオゾウなど、たくさんのユニークな野生生物が暮らす豊かな森。その美しい多様な生態系のスライドを興味深く見ていただけました。
しかし、話はそこから「影」の部分へと移ります。 急激なアブラヤシ農園の開発によって森が分断され、行き場所を失ったゾウたちが、人間が仕掛けた罠(ロープ)に足を取られて怪我をしてしまっている現状を紹介しました。
ロープが足に深く食い込んだまま傷ついているゾウの写真を見た瞬間、教室内は水を打ったように静まり返りました。 この現実を「初めて知った」という学生も多く、豊かな自然の美しさとのギャップに、大きなショックを受け、真剣な眼差しで画面に見入っていました。
ジレンマにどう立ち向かうか?
授業の後半では、そんな現場をよく知る学生たちにグループに分かれてディスカッションをしてもらいました。 テーマは、「安くて便利な油」と「野生動物のすみかの破壊」のジレンマに、どう立ち向かうか?
・「『環境にいい』というメッセージだけでは、人はなかなか動かないのでは?」
・「傷ついている動物たちに、今、直接できることはないの?」
正解がないこの難しい問いをみなさん真剣に考えていただきました。

最後に:「美味しい」の未来を守るために
「環境を守る」と聞くと、なんだかとても大きなテーマに感じてしまいますよね。もちろん「野生動物たちがかわいそうだから」という思いも大切ですが、実はもっと私たちの身近な生活、特に「毎日の食卓」に深くつながっています。
私たちが「美味しい料理」を作ったり、食べたりできるのは、すべて豊かな自然が食材を育んでくれているからです。もし自然環境が壊れてしまえば、美味しいお米や野菜が育たなくなったり、魚が獲れなくなったりして、私たちが大好きなメニューを並べることすらできなくなってしまいます。
環境や資源を守ることは、遠い世界の話ではなく、「これからも、大好きな美味しいごはんを食べ続けられる未来を守ること」そのものなのです。
未来の「おいしい」を創り出す、辻調理師専門学校の学生さんたち。パーム油にまつわる問題を知り、自分たちに何ができるのかを真剣に悩んだ彼らの姿に、これからの食の未来への希望を強く感じた一日でした。
それでは、また次回のスタッフブログでお会いしましょう!