スタッフブログ

「いのちをつなぐ学校」スタッフ
による活動報告です。

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フクオカハカセと行くボルネオ学習ツアー|中高生によるボルネオレポート前編

2024.09.27

こんにちは。「いのちをつなぐ学校 by SARAYA」のスタッフの森です。

みなさんは、どんな夏休みを過ごしましたか? 「いのちをつなぐ学校」では、校長先生である生物学者の福岡伸一さんと一緒にマレーシア・ボルネオ島で環境問題や生物多様性、生命について体感する「フクオカハカセと行くボルネオ学習ツアー」を2024年8月16日(金)~22日(木)に実施しました。

今回は中学1年生~高校2年生の6名の方に参加いただき、野生生物の保護施設や、パーム油(アブラヤシ)のプランテーション(農園)を見学してきました。今回のスタッフブログでは、参加いただいた6名のうち、中学生3名のボルネオレポートをお届けします。


蝶の美しさについて
中村陽らら(中学2年)

魅力あふれるキパンディパーク
私は先日スタディーツアーでボルネオ島へ行った。ボルネオ島ではゾウの保護施設であるBESや、保護された動物だけで成っている動物園ロッカウィなど沢山の場所を巡った。その中でも特に印象に残ったのはキパンディパークだ。キパンディパークではネットハウスの中で沢山の種類と数の蝶が飛んでいて、そこで蝶をキャッチアンドリリースすることができた。また、熱帯雨林の中に少し入ることもでき、沢山のウツボカズラを見られた。暗くなってくるとライトトラップで沢山の昆虫が集まった。他にも、日本では食べられないようなフルーツを食べたり、沢山の標本を見たりした。
ライトトラップでは珍しい生き物を沢山見られた。サソリもやって来て驚いた。ボルネオ島の自然の豊かさを改めて感じた。昆虫が沢山来るのは何回もトラップをやっているため、昆虫も場所を覚えていることが理由らしい。

生物多様性とぶつかるプランテーション

これでも以前と比べると、プランテーションにより多様性は大分失われたらしい。しかし、プランテーション農家が完全に悪いわけではない。農家もそうしないと稼ぎを得られなかったのだということを今回学んだ。では、どうするべきか、というのに答えはなく、今後自然とどう付き合うかが課題であることに違いはない。自分もジレンマを感じた。今は全然わからないけれど、そういって何も行動を起こさないのは良くないので、認証マークがついた商品を買うなど自分にできることはしたいと思う。

蝶の楽園
私は蝶がとても好きなので、バタフライパークを特に楽しいと感じた。ハウス内で珍しい蝶を捕まえるという経験は中々できない。だからこそ魅力を感じた。私はマレーシアの国蝶であるアカエリトリバネアゲハを捕まえることができた(写真)。生きたこの蝶を自分の手で持って近くで観察できるという経験はとても貴重で、限られた場所でしかできない。捕まえた時はとても嬉しかったし、興奮したし、何よりも美しいと感じた。
しかし、「蝶によっては、食草が育つのに時間がかかり、幼虫の飼育がしにくいものもいる」と施設の人が言っていた。そこで、貴重な蝶にはそれなりの理由があり、そのような蝶を育てるのは、難しいということに気づかされた。「生態系は良くできているなぁ」としみじみと感じた。
また、施設の人はこの施設が成り立っているのは日本人が来るからだと言っていたそうだ。それを聞いて私は驚いた。日本人以外はあまり訪れないという。日本人は昆虫が好きなようだ。これは、ある程度収入があるという経済的な理由と昆虫が身近にいるという環境的な理由によるものだと思う。
日本人が昆虫を好きだということは素晴らしいことだし、誇らしいことでもある。しかし、このような魅力的な施設を残していくためには昆虫好きな人をもっともっと増やす必要がある。そのためには昆虫と実際触れ合うことが大切だ。しかし、虫に苦手意識を持っている人に触れ合わせるのは難しい。だから、ここで昆虫の魅力について語りたい。

昆虫の魅力
昆虫の魅力として第一に挙がるのは変態することだ。完全変態する昆虫は蛹の期間を経て成虫になり、劇的な変化を遂げる。地味だった幼虫が固いヨロイや角、もしくは優雅で綺麗な翅を持ったりする。特に幼虫から育てていた蝶が羽化するととても感動する。
幼虫は地味だと前述したが、幼虫にも魅力がある。幼虫にしかない丸っぽさ、柔らかさ、動きの鈍さなどが何ともいえない可愛さを出しているのだ。しかし、そんな幼虫も自分の身を守るすべを持っている。例えば、ナミアゲハの幼虫は1齢〜4齢までは鳥の糞に、終齢は葉に擬態する。また、肉角というものを持っていて、刺激されると頭部から出して異臭を放つ。可愛さの中に自然を生き抜く力強さを持っていることがなんとも魅力的だ。
また、昆虫が餌を食べているところも魅力的だ。人間とは違う口を持っていて、違う食べ方をする。これは当たり前なことだが、その違いが面白い。種類によって食べるものに合った口の形をしているので、食べるものと口の形と食べ方を比較してみると楽しいと思う。さらに、完全変態する昆虫は変態後、口の形が変わるので、それも比べてみると面白い。
そして何よりも魅力的なのは左右対称なことだ。同じ種類でも個体によって模様や色、形が少し異なるのに、左右は必ず対象になっているのはとても面白い。標本を作るときは昆虫の身体の片方に偏らせて針を刺すのも、左右対称なことが理由である。
このように全てを言い切ることはできないが、昆虫の魅力は沢山あるので見つけたら逃げるのではなく、触らなくともぜひ見てみてほしい。そうしたら魅力を感じるかもしれない。また、このような魅力を海外の人にも伝えていきたい。

本当は話したかったこと〜福岡博士の講義を聞いて〜
実は、私は昆虫の美しさということについてもここで語りたかった。(そもそも美しさについての話題を提示したのは福岡博士であるが。)上記のものは全て昆虫の美しい部分である。しかし、そのような部分をなぜ美しいと感じるかは分からない。
私はツアーの終わりに福岡博士の講義を受けた。その講義で博士はどのようなところに人は美しいと感じるか、という話をされた。博士の意見は、「生命の循環の一部であるものを人は美しいと感じる」というものだった。私はそれを聞いた時は何も考えずに納得していた。しかし、博士が例として火力発電と原子力発電をだしてくださり、初めて疑問を抱いた。博士は「火力発電は化石燃料を使うものの生命の循環の一部であるから美しくない訳ではない。原子力は使っている力が本来生命活動で使うことのないエネルギーなので美しくない。よって、原子力よりは火力の方がましだ」とおっしゃった。私は火力発電で二酸化炭素を大量に放出するならば、地震が起こる可能性が低い場所で水素爆発などの事故に気をつけながら原子力を使う方がよい、という考えを少なからず持っていた。なので、博士の理論に疑問を抱いた。そこで、なぜ博士の理論は私の中で腑に落ちなかったのかを考えた。するとこう思った。「人間は他の生物とは違う特別な存在になってしまったから、生命の循環の中で同じように考えてはいけないのではないか」と。だからといって、では人間はどのような存在として扱えばいいのかはわからないが。この意見に博士はうなずいてくださった。「だからこそ、今後他の生物との関わり方を考えていかなければならない」とおっしゃった。博士は本当に心が広くて、真髄に届くくらい物事を深く考えているのだなと感じ、尊敬の念を抱いた。
要するに何を言いたいかというと、私はなぜ人は昆虫を美しいと感じるのかを書きたかったが、人が美しいと感じるものが何かわからないため、結論を出せなかった。これから、福岡博士くらい博識になり、この問題の結論を出したい。ということである。

最後に
最後に、このボルネオツアーを企画して下さった方々、お金を出して下さったSARAYAさん、両親、取材のためにツアーに参加して下さった方々、一緒に学びを分かち合ってくれた仲間たち、沢山の学びを与えて下さった現地の方々を始めとするこのツアーに携わって頂いた全ての方に深く感謝申し上げます。今後の活動もご指導の程、宜しくお願い致します。

写真:キパンディパークで捕まえたアカエリトリバネアゲハ

ボルネオツアーを通して学んだこと、感じたこと
水越美晴(中学3年)

この写真は、ボルネオ島のゴマントン洞窟でコウモリが一斉に外に飛び立つ様子です。(編集注:画面上に黒い塊のように見えているのが、飛翔するコウモリの群れです)
これは夕暮れどきに発生し、この時間になると毎日この光景を見ることができます。
コウモリは夜行性のため、昼は洞窟の中で暮らし、夕方になると外に出てきてエサとなる昆虫を探します。
ゴマントン洞窟にはツバメも住んでいて、朝洞窟を出てコウモリが外に出るころに洞窟に戻ってきます。コウモリとツバメは共存しています。

私は、この場所で自然の偉大さや生きることを実感しました。なぜなら、この場所でコウモリのほかにコウモリを狙う鳥たちや寝床を作るオラウータンを見ることができたからです。
様々な動物が日々生きることができる、自然はとても壮大で言葉に表せないほどの美しさでした。
そして、その自然に生きるということは食べる、食べられるという関係もあり、生きるために必死な様子を見て生きることとは何かを考えました。
私は、日本では絶対に気づけないことに気づくことができたと思ってます。


人間と自然の距離
水島花凛(中学1年)

私は今回の旅に参加できたことをとても誇らしく思っています。ボルネオにはたくさんの植物や生き物が存在していて、現地の人の話を聞くことができて、私にとって貴重で楽しい経験になりました。私は少しでもこれらの良さを残すことに貢献したいです。
今回の旅で一番印象に残ったのは、4日目ビリット村の河でのイブニングクルーズで見た野生のゾウです。
クルーズの前に見学したBES(ボルネオ・エレファント・サンクチュアリ=ゾウの保護施設)のゾウは、人間たちに穏やかに接していましたが、一方で私には人間を怯えて怖がっているようにも見えました。保護されたゾウは、アブラヤシを生産する為に元の森を切り倒して住処を奪った人間をどう思っているのかと私は思っていました。

野生のゾウは初めて見ました。ゾウは三頭いました。クルーズ船20隻ほどが近寄ってものんびり草を食べています。とてもかわいいと思いました。だけど、こんなにクルーズ船がたくさん近づいて観察されるのは果たして本当に野生と言えるのかなとも思いました。
ボルネオで実際に野生のゾウなどを観察したり、保護施設を訪れたりすることで、自分の国にいるだけでは分からなかった課題を知ることができます。それ自体はとても良いことですが、ボルネオ限らず実際に現地に行って新たな発見を見つけたいのなら、その相手への配慮が必要です。

私はボルネオの旅最終日にセピロックオラウータン保護センターに行ってきたのですが、そこでは私たち含めオラウータンを見ようと観光客でごった返していました。私はこの光景に違和感を抱きました。「オラウータンのための保護施設のはずなのにこれでいいのかな」。そもそも保護施設や動物園などは学ぶためにあるはずですが、ただ見て終わりだと意味はありません。飼育員さんたちも決してこのようなことを望んでいないはずです。たくさんの人が来て現状を知ってもらうのは大切です。来てもらうことでお金も入ると施設の環境も充実します。ですが、自然や動物を観察するときは、自然に対して敬意を払いながら見ることが大切だと私は思いました。

Photo by Ryuhei Oishi

私は先程にも書いた通り、自然も人も地球も大切にしたいです。動物園で見たゾウも熱帯雨林も、アブラヤシを育てている人も、保護されたゾウたちを大切に育てている人も幸せになって欲しいと私は願っています。だからこそボルネオから遠く離れた日本にいる私たちでも何かできることがあるなら私は取り組みたいです。ボルネオで一緒に旅をしたメンバーで、自分たちがボルネオで実際に見たもの、体験したことを本に書きたいなと話しました。ボルネオの現状について知らない人にも知ってもらえるようにしようと思いました。私は絵を描くのが得意なのでこの特技を活かせたらと思います。
最後に、一緒に旅をしてくれた皆さん、本当にありがとうございました。