スタッフブログ

「いのちをつなぐ学校」スタッフ
による活動報告です。

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フクオカハカセと行くボルネオ学習ツアー|中高生によるボルネオレポート後編

2024.10.09

こんにちは。「いのちをつなぐ学校 by SARAYA」スタッフの森です。
前回に引き続き、校長先生である生物学者の福岡伸一さんと一緒にマレーシア・ボルネオ島で環境問題や生物多様性、生命について体感する「フクオカハカセと行くボルネオ学習ツアー」のボルネオレポートをお届けします。

今回は、高校生3名のレポートです。


人と動物
土田澄風(高校2年)

私には一つ、夢がある。それは人と動物が共生できる未来を創ることだ。そんな私がこのボルネオの旅で学んだこと、それは野生動物の世界に足を踏み入れた時に感じた、動物の人との関わり方だ。私はゴマントン洞窟で、オランウータンやコウモリなどたくさんの野生動物達と出会った。彼らは同じく自然を利用して経済活動を行う人間を拒むのではなく、我々を受け入れ、尊重をしてくれているように感じた。まるで我々人間も生態系の一部であると言われたようだった。ゴマントン洞窟で出会った動物達だけではない、クルーズ中に出会ったワニやボルネオゾウもそうだった。遠目から見ている私達を邪険に扱うのではなく、人を自然の一部として認めてくれている、そう感じたのであった。この時、私は気づいた。動物達との距離をつくっているのは我々人間ではないかと。彼ら動物は我々人間を受け入れてくれているばかりか、我々に彼らの美しい生命活動を見せてくれているではないか。しかし我々はどうか。我々は彼ら野生動物の生命活動を尊重し、受け入れているだろうか。答えはNOだ。我々は自然を尊重しないし、自然に還元することもない。地平線の向こう側まで広がったプランテーションはこのことを象徴しているといえよう。しかしこのプランテーション、誰の生活のために作られたものであろうか。現地の方々のためだろうか。その一面もあるだろうが一番は我々先進国の人間の充実した生活のためだ。技術発展の行き着く先、先進国が実質的に動物から、現地の人々から生活と豊かさを奪っている。私はこの事実を恥じた。子供ながらも一先進国の人間としてこの現状を変えなければならないと強く感じた。しかしどのように変えればいいのだろう。そのヒントは人の生態系的役割にあると私は考えている。急に生態系的役割と言われると難しく捉えてしまう人も多いだろう。しかし、これは難しいことではない。人にしかできないことを探してみれば良いのだ。では人にしか出来ないこととは何だろう。私が考える、人にしか出来ない事とは環境を大きく変える事である。これまでこの力は大気汚染や地球温暖化など悪い方向に使われていたが、天災から生物の生息地を守るなど良い方向に働かせることが出来る。これこそが自然から求められた人の生態系的役割なのではないのだろうか。この旅の経験は、今までの私の常識を壊し、新たな価値観を与えてくれた。この旅で得たこの人の役割という考え方はこれからの私の活動の主軸になっていくだろう。いつか人と動物が共生できる未来を掴めるよう、尽くしていきたい。


保護施設の問い
中村彩瑚(高校1年)

私は今回のボルネオの旅に日本で保護施設との違い、ボルネオ島の保護施設の現状、運営の仕組み、野生動物がどんな生活を送っているのかを学べたらなと思い参加しました。参加してみて学びたかったことを学ぶことができましたが、学んだことで保護施設は本当に必要なのか? という問いを持ちました。
きっかけは色々あるのですが、主に行った三箇所の保護施設がきっかけです。

一つ目の保護施設はロッカウィという保護された動物を動物園のような形で保護してる施設です。ここでは数が少なくなってしまっている野生動物を保護したり、アブラヤシのプランテーションに侵入してきてしまったり、プランテーションへの侵入を防ぐ罠に捕まり怪我をしてしまったボルネオゾウの保護をしている施設です。会うことのできた動物は野生では会うことが難しい動物だったり、保護されたボルネオゾウから産まれたゾウなどに会うことができました。また、まだ人間に慣れていないため、施設で暴れてしまったりするリスクがあるので、一般の人に開放されているゾウたちとは別に施設の後ろの方に隔離されていたボルネオゾウたちに会いました。隔離されているゾウたちの中には大きな怪我をして施設に来たゾウや、人間への恐怖などから、気性の荒いゾウがいました。このゾウ達への対応は地元の人など様々な人々から賛否両論分かれています。そのため普段は一般公開されていません。
実際に隔離されているゾウたちをみて、施設の人に話を聞いて、「ボランティアとか保護活動っていいことだからみんなに共感してもらえて、まさに善のようなものだと思っていたけど、捉え方や知識の量によって悪になってしまうんだ」と思いました。また、そもそもこのロッカウィに野生動物やボルネオゾウが来たのは全部人間のせいで、人間が森林伐採やアブラヤシのプランテーションを始めたり、罠を仕掛けなければこんなことにはならず、保護施設はいらないのではないかなと思いました。

二つ目の保護施設はBES(ボルネオ エレファント サンクチュアリ)という、現在はまだ一般公開されていないボルネオゾウ専門の保護施設です。ここでは保護されたボルネオゾウを5頭ほどみることができました。そこにいたゾウ達は一つ目に書いたロッカウィの影響もあるかもしれませんが、少しばかり退屈にしているように見えました。理由としては一頭のゾウが柵の外にある植物に鼻を伸ばしていたからです。だから? と思われてしまうかもですが、私は施設の中だけでは物足りないから鼻を植物に伸ばしていたのではないかなと思いました。これはあくまで想像ですが施設で生活するのではなく外の森林の中に戻りたいのかなと思いました。実際にはゾウ達の考えていることは分かりませんが私はそのように感じました。ここの施設は実際にゾウ達を群れ(野生)に返すことも目標にしていますが、まだすべてのゾウ達を群れ(野生)に戻せていないのが現状です。しかし数頭のゾウをしっかりと群れに戻しているという実績も確かにあります。このまま全てのゾウ達を群れ(野生)に返して、いつかこの施設がいらなくなるくらいゾウ達にとって退屈せず、安全な森林に戻って欲しいと思いました。

三つ目の保護施設はセビロックというオランウータンの保護施設です。ここに行くまでは保護施設はいらないのでは? これから無くしていった方が良いのでは? という思いが強かったのですが行ってみて、やはり必要なのかな? 増やすべきなのかな? と思いました。なぜならここの保護施設は先ほどあげた保護施設とは少し違い、もしこれから保護施設が増えていくならここのような保護施設が増えるといいなと思ったからです。違う点としては、この施設は森林の中にあり、比較的野生の環境に近くて、保護して保護施設から卒業したオランウータンがいつでも行き来できるようになっていたり、他の種類の野生動物も施設にくることができたりしていて、比較的動物達が自由に過ごせるようになっていました。森林と行き来できることですでに怪我などが回復したオランウータンが餌を求めて施設にやってきたり、かつて施設にいて森林に帰ることのできた子が子供を産み、子供を見せに戻ってきたりすることがあるそうです。今まであげた保護施設は決まったスペースで動物達が過ごしていて少し退屈そうだと思いましたが、ここの保護施設はオランウータンがいきいきとして、幸せそうに暮らしているように見えました。オランウータンがいきいきと暮らしていて戻ってきたくなるような保護施設ならあってもいいのかな? と思い、オランウータン達が幸せそうなら、良いのかなと思いました。

今回の旅では多くの学びがあり、学んでいく中で保護施設は必要なのだろうか? という一つの大きな問いを持つことができました。まだその問いは解決しておらずモヤモヤが残っていますが、このモヤモヤを大切にして自分の中でのベストな答えを導き出したいなと思っています。ベストな答えを導き出すためにもこれからいろんな方に取材をしたり、今回行った保護施設以外の場所にも出向いて自分の目でしっかりと見て、たくさんの学びを吸収して、吸収したことをいろんな人に伝えていきたいです。


ボルネオレポート
平賀千里(高校1年)

私がボルネオ島に行った率直な感想として、本当に感動しました。双眼鏡で除く生物の表情。頑張って登って見た絶景。目の前にそびえ立つキナバル山。ライトトラップで光に集まる虫達。その虫達を捕食に来たであろう、カエルやヤモリ。川から見る月。登りたての太陽。など本当に心が震えるような体験ができました。
そんなボルネオ学習ツアーで私は思ったことが三つあります。

一つめは、アブラヤシのプランテーションについてです。
生物の宝庫であるボルネオの森は今少なくなってしまっています。大きな原因としてアブラヤシのプランテーションの拡大があります。最初は、「だったらプランテーションをやめればいいじゃないか」と思っていました。しかし、そんな簡単な問題ではないと知りました。アブラヤシのプランテーションは現在、マレーシアの収入のほとんどを占めているからです。また、プランテーションのオーナーはマレーシアの子どもがなりたい職業1位でもあると聞きました。今突然プランテーションをやめてしまうと多くの人が職を失ってしまい、その家族も含め多くの人が路頭に迷うことになってしまうことになります。今回実際にプランテーションで働いている方のお話を聞く機会をいただきアブラヤシの収穫を体験させてもらえました。これらの体験を通じて「これははやくどうにかしないといけない問題だな」と思いました。これは体験することでこの問題が自分のこととして捉えられるようになったからだと思います。日本に帰ってきてからスーパーに行ったとき、パーム油の表記を探してみました。想像より多く驚きました。気にすると想像以上に目に留まると思い、体験することの大事さを学びました。

二つめは、生物が追いやられてしまっているのではないかということです。
今回のボルネオツアーでは、夜と朝と夕方にクルーズをしました。その際、ボルネオゾウやテングザルをはじめとする、様々な哺乳類や鳥類、爬虫類などのたくさんの種類の動物をみることができました。夕方のクルーズでは親子のボルネオゾウやテングザルの群れなどを見ることができ、とても嬉しかったです。個人的には、ミズオオトカゲを見ることができて、興奮しました。ミズオオトカゲは迫力があり、図鑑で見るものとは違い、肉眼で見るミズオオトカゲはとても凛々しくかっこよかったです。今回のクルーズでは何度もボルネオに来たことがあるスタッフさん方の話でも「今年はとても多くの種類の動物を見ることができた」と言っていました。この日の夜の振り返りの時間で中村彩湖さんが「動物は人間が怖くて川の方に来てしまっているのではないか」と言っていました。これを聞いたとき心が動きました。こんなに見れたのは、正常なわけでも運が良かったからでもないのだと。動物を見たときにたくさん見れて良かったと思った自分がいたことも含めて、人間の残酷さのようなものを感じました。

三つめは、動物の保護施設についてです。
今回3件の動物の保護施設に行かせていただき、お話を聞くことができました。その中でBESにて、こちら側から質問をさせていただいた際に、中村陽ららさんの「目標は何か」という質問に対し、「この施設に一般に公開して、沢山の人に来てもらうこと」と回答されていました。その後、中村陽ららさんが「もっと先のことについての回答が来ると思っていた」と言っていました。私は確かに、と思いました。スタッフの中西さんは「彼らは毎日電気が止まったり、水が出なかったりする中、ゾウと向き合い保護活動をしているので、今すぐにお金が欲しいんだ」と言っていて、ロッカウィでもスペースが足りないと言っていたことを思い出しました。このことから、どこの保護施設も何かに困っていて、保護することのできない動物がいることを実感して、何か響くものがありました。

全体を通して思ったことは、ボルネオ島の問題は早急に解決しなければいけないということです。ボルネオ島に関する様々な問題に共通して言える解決策は「知ってもらう」ことです。ボルネオ島に関する問題は、自分たちの身の回りに関わっています。このままいけば10年後、20年後にボルネオ島のジャングルやオランウータン、ボルネオゾウが存在しているかわかりません。そうならないために、この問題を知り、一人一人が食品に「パーム油」と表記されているのを見たときや、動物園でオランウータン見たときなどにボルネオ島の問題を思い出せるようになれば、解決に向かって行くと思います。

今回ボルネオ島に行くことができて本当によかったです。ボルネオ島で心に刻まれたことを忘れずに自分の様々なことに繋げて行きます。ありがとうございました。